ギルガメシュ叙事詩
ピナール・アクハン著・天利なつき訳
メソポタミア発のギルガメシュ叙事詩はしばしば世界最古の物語と呼ばれる。この物語については考古学的、文学的、歴史的側面からの多くの研究がある。しかし私がこの記事を書くのは、この物語について哲学的な視点を持ちながら、背景にある象徴的な意味について探っていただきたいからだ。
ウルクの王ギルガメシュは、知られている中でも最古の英雄である。古代ギリシャのヘラクレスのように、ギルガメシュは闇の勢力と戦った英雄だ。
ギルガメシュは、古代メソポタミアの知恵の神であったエンリルの息子である。ウルクの人々は彼らを虐げていたギルガメシュに不満をたらした。人々は神々に、ギルガメシュに挑むことのできる人を創造するよう祈りを捧げた。祈りに答え、神々はエンキドゥをよこした。彼は人と動物の混血であり、動物のように飲み食いし野生の獣と共に暮らした。長い戦いの後、ギルガメシュとエンキドゥは離れがたい友人となった。彼らは共に数々の旅に出かけ、試練を経験した。最初の旅は杉の森で始まり、そこで彼らは森の守護者であるフンババの襲撃を乗り越えなければならなかった。「森での生活」は私たちの願望によって変化する人格を象徴する。森の守護者は、私たちが生涯持ち続けるプライドを象徴する。ギルガメシュとエンキドゥの最初の課題は、プライドに打ち克つことであった。
彼らは野生の動物や火災や雄牛と戦い、彼らが直面する試練を乗り越えながら、川や山や草原を越える旅を続けた。彼らの旅の最後に、ギルガメシュは友人のエンキドゥを失うという試練を受け入れなければならなかった。ギルガメシュは友人の死を7日間の昼夜にわたり嘆いた。ギルガメシュが遂にエンキドゥの死を受け入れたとき、彼は人生の意味について疑問を感じ始めた。「エンキドゥのように死ななくても良いのではないか?」彼は死を免れる唯一の方法は不死になることと考えた。そこで彼は大洪水の生存者であるウトナピシュティムを探しに出かけた。神話の後半は、洪水とギルガメシュの不死を求める旅の物語である。
ギルガメシュはメソポタミア神話の唯一の英雄ではないが、多くの神話にみられるように、彼の生き方は私たち一人ひとりに当てはまる。彼の試練は私たちの人生においての困難に似ている。彼はエンキドゥに礼儀正しくすることを教えようとしたが、私たちの野生においても、動物的な性質は教育されるべきである。最後に、ギルガメシュが死に直面したときの人生への疑問は、完全に物質的な段階を越えた人生を求める誰もが持つ疑問である。